パリは動き始めた
―2024年パリ開催オリンピック・パラリンピックで、セーヌ川支流のビエーヴル川約6kmを復活ー

 2024年開催予定、パリのオリンピック・パラリンピックでは、「泳げるセーヌ川にするため水質改善の取り組みとして、支流のビエーヴル川、約6kmを復活させる」と、パリ市が発表。国連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる中、新国立競技場では渋谷川復活をあきらめて報道関係車用のコンクリートの駐車場にして、Bゲート周辺に60m足らずの川らしきものを創り、渋谷川の稲荷橋では川に新しくフタをして広場を作ってオリンピック・パラリンピックを迎えようとした日本とは、まったく異なる展開となった。



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 パリ市は、2020年10月、ビエーヴル川を復活させると発表。2021年から調査に取り掛かり、最大30万ユーロの予算を考えている。
 ビエーヴル川はパリ市の中心部を流れる川で、カルチェラタンやパリ大学で知られるパリ5区や13区を流れ、オーステルリッツ駅近くでセーヌ川に合流。全長約6kmに及ぶが、20世紀初めに川の汚染と悪臭により、下水道として転用されてしまった。
 現在のパリ市長の公約でもあった「自然と共生するパリ市を創る」という言葉とおり、このプロジャクトが始まった。

 コンセプトは、「緑の遊歩道と爽やかな小島をつくろう」。
水生の連続的な再生と脆弱な生物の多様性が輝きを取り戻すことを目的に始まるのであるが、国連の提唱するSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる中、世界のを代表する都市の中ではいちはやく、今後私達が進むべく道を示したものとして高く評価されるものと考えられる。
 大量の資源を使って、大量に生産して、大量に宣伝して、大量に消費して、大量に廃棄するということが悲劇的な結末を迎えるであろうことが明白な今、次にどうするのかを選択するのか。私達は、とても大切な選択の時期を過ごしています。

 今回の東京オリンピック・パラリンピックは不幸にもコロナ禍のため、予定通りの開催ができませんでしたが、環境との共生という視点や市民との協同という視点では、もともと十分なものではなかったのではないでしょうか。
 新国立競技場は、もともと東京都の都市計画審議会で風致地区である明治神宮外苑地区の一部の規制を緩め、建築物の高さ制限などを変更。その後、現在のプランになりましたが、もともと渋谷川のあった部分は渋谷川を再生するという予定で進められていました。しかしながら、報道用の車両を駐車する場所がないという理由で、渋谷川復活予定だった部分は、コンクリートで固められ、駐車場になり、申し分程度にBゲート前に循環式の人工的な水の流れを作るという結果になりました。
 また、同時に進められた渋谷川が開渠になっていた稲荷橋においては、東急グループの進める線路跡地の活用と絡めて渋谷ストリームという商業ビルが建築されました。それに伴い、ビルの前の渋谷川に、更に新しくフタがされて広場となり、渋谷川ルネッサンスが護岸に設置した溶岩パネルが取り除かれてしまいました。この溶岩パネルはなるべく自然に近い環境を創出する目的で設置され、小学校の教科書にも写真いりで掲載されています。新たに再生水を稲荷橋周辺から流すことに伴い、壁泉ということで作られた護岸には黒カビが生え、周囲に悪臭を発生させるという結果をもたらしています。

 実は東京都も2019年12月に発表した2040年に向けた長期計画の中で、都市河川の復活をかかげています。その中では、玉川上水を復活させると明記されており、それを水源としていた渋谷川は、復活を実現する可能性が高まっているのです。

 川が戻れば、そこに暮らす人・訪れる人が変わり、やがて街や社会が変わります。歴史そのものが大きく変わるのです。ぜひとも渋谷川を再生させるべく、多方面からのご協力をお願い申し上げます。



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